民事訴訟判決の公開 ――草津町捏造告発事件

草津町捏造告発事件

草津町捏造告発事件(時系列はこちら)の一連の事件の中で、捏造告発者が訴えられた民事訴訟の判決を入手したので、公開する(※2024/11/12に控訴審判決と関係書類を追加し、11/26に控訴審についてのへのコメントを追記した。)。

地裁判決:前橋地判令和6年4月17日

高裁判決:東京高判令和6年11月7日
高裁の提出書類:原告附帯控訴状、被告控訴理由書、被告附帯控訴に対する答弁書

結論

黒岩町長に対する名誉毀損の損害賠償は、地裁判決では以下の通り認められた。

  • 新井祥子 275万円
  • 飯塚玲児(告発本著者) 110万円
  • 中澤康治議員 請求棄却

地裁判決の後、飯塚氏は110万円を弁済した。新井氏が控訴したため、黒岩町長・新井氏の間の事件のみが控訴審の審理対象となり、上記弁済された110万円を除いた165万円が認容された。

11月22日の期限までに上告・上告受理申立はなく、判決は確定したとのこと。

報道記事
地裁:毎日産経
高裁:NHK毎日産経弁護士ドットコム

コメント

地裁判決

「現場」の録音が存在し、性犯罪告発が捏造であることは明らかなので、実質的に問題となるのは損害額である。弁護士費用が10%加算されるので、それを除くと、新井250万円、飯塚100万円、中澤議員0円という結論となっている。

新井の250万円は、まず相場通りというところだろう(個人的にはちょっと安いのではとは思うが。)。

飯塚の行為は、町長の性犯罪という重大な事実を著書で発表したのだから、100万円はいくらなんでも安過ぎると思う。確かに、出版後の継続的な名誉毀損行為には、飯塚はあまり関わっていないようだが、だからといって、最初の出版行為を軽視べきではない。

なお、新井は「性交渉は嘘だったが、触られたのは事実」と主張しているし、飯塚は、訴権濫用だとか、虚偽だと分からなかったのは仕方ないとか主張しているが、当然のことながら、一蹴されている。

意外だったのは、中澤議員に対する請求が棄却されたことだ。これは、原告の主張が、町議会での議案読み上げ行為のみだったことに由来する。実際には、その後も、中澤議員は議会外で再三にわたって名誉毀損行為を実行している(たとえばこちらの記者会見)。これらの行為の多くは訴訟提起後になされているから主張から漏れたと推測されるが、原告が主張立証していれば、当然、名誉毀損は認められただろう。

高裁判決

高裁判決は連帯責任である飯塚氏の弁済を控除しただけで、実質的には地裁判断の維持である。
控訴人の主張が認められる余地は皆無だったが、被控訴人(町長)による「附帯控訴」(地裁判決の認容額を増額してほしいという主張)が認められる可能性はあった。高裁としては、地裁判決を覆すほどではないと考えて、維持判断となったのだろう。その理由付けは、要するに、新井の行為は悪質で被害甚大だが、町長が対抗的な活動・言論をしているというもので、やや強引ではある。

控訴審の手続で問題となったのは、新井被告(控訴人)の訴訟遅延である。控訴人は控訴提起から50日で控訴理由書を提起するルールであり(民事訴訟規則182条)、本件では6月中旬頃が提出期限だったはずである。ところが、新井は、控訴審の第1回口頭弁論期日である9月26日まで控訴理由書を提出せず、当日の期日20分前1に提出した。町長の附帯控訴に対する答弁書も提出する必要があるが、これも期日当日に提出し、しかもその内容は、追って提出するというものだった。
弁護士の常識として、多少の期限徒過はあり得るかもしれないが、控訴審の口頭弁論期日当日まで書類を一切提出しないということは、ほとんど考えられない。これは推測だが、控訴人代理人の和久田弁護士は書類の準備はそれなりの時期にしていたはずで、それでも提出しなかったのは、控訴人(新井)本人の確認が取れなかったからではないだろうか(確認が取れないのであれば書類を提出することは難しい。)。あるいは、出そうと思えば出せたが、訴訟遅延のためにわざと提出を遅らせたということも考えられるが、そこまで悪質なことを弁護士がやるとも、なかなか思えない。
裁判所は控訴人の訴訟遅延に激怒したと思われる。20分前に提出されても、書面の内容さえ把握が困難で、次回期日を設定して処理せざるを得ないとも思えるが、そうすると訴訟遅延行為を認めることになる。半ば強引に第1回期日で弁論を終結させたのだろう。

※アイキャッチ画像の写真は、2019.11.30「新・情報7daysニュースキャスター」(TBS)から、新井祥子議員(当時)が虚偽の「告発」をする場面を引用した。

コメント

タイトルとURLをコピーしました